いつまで日本は「安全な国」でいられるんだろう

前回のエントリーの最後に勉強について書きますと予告したのですが、以下のブログ記事と連なるコメントに目を通し考えるところがありましたので、そのことを書きます。

 

philhardison.hatenablog.com

前提として、私は日本生まれ日本育ちのいわゆる普通の日本人で、高校卒業してアメリカの大学に入り3年経った女子大生ということ、それから「性暴力の講習を受けていても暴行するアメリカ人」も「性暴力の講習を受けていなくても暴行しない日本人」の両方の存在を存じ上げておりますのでそこをご理解いただいた上で読んでください。

 

1、日本とアメリカの性暴力に対する認識の違い

アメリカの大学では1年生のときに講堂に集められて、2年生以降は1年に1回オンラインで1時間弱の性暴力に関する講習を受けることが義務づけられていて、受けないとペナルティがあるのです。それは州政府からの要請だと聞いたことがあるのですが、内容は性暴力の定義やいろいろな場面や状況(例えばお酒の席)での性行為は合意とみなされるかどうかなどです。アメリカでの性暴力の定義はとても単純明快で、異性間・同性間かに関係なく「双方の合意のない性的接触」は性暴力です。その定義にのっとるなら痴漢というのは疑う余地なく完全に性暴力であり許されない犯罪行為であるのですが、日本での痴漢に対する認識はあまりに軽いと思います、痴漢がいることが当然で、それに対してどう自衛するかの話題ばかりで痴漢を生み出す要因や社会全体への議論はほとんどなされていませんよね。

 

日本のみならず、各地域にはそれぞれの文化・風習があることは重々承知の上で、この定義が全世界に広まって欲しいと願っています、なぜなら性行為にいたる際に「双方の合意よりも重要なことはない」*1という意見に深く同意するからです。もちろんアメリカ人の中にも地域や年齢によって性暴力に対する認識はバラつきがありますが、基本的に大学の中では「NO means NO」が大多数のアメリカ人に周知されていると感じます。ですから、ハーディソンさんが日本語だけでなく英語でもFBに投稿されたのは、至極当然だと思います。

 

2、なにをもって日本は性暴力被害者の少ない国なのか

日本は安全で諸外国に比べて性犯罪率の低い国だとよく言われていますが、実際はどうなんでしょう。そもそも「痴漢があって当たり前」*2とか性暴力被害者の方はなかなか声があげられない事実など、暗数の存在をまるっきり無視してそのような主張ができるのが不思議で仕方ないです。

性暴力被害者の方が声をあげられないのは被害そのものの特性もありますが、被害者に対してのバッシングの苛烈さもあります。今まで対人・ネット上での性暴力の被害者の方に対して言及されていたことは、思いつくだけでも、「性別、年齢、国籍、人種、容姿、スタイルの良し悪し、職種、服装、性格、状況」などなど多岐にわたります。このことから推察できるのは、すべての人に認められる「落ち度のない被害者」という人間は存在し得ないということです。

性犯罪率の低い国というフレーズから連想されるのは、「性暴力の定義がはっきりと認知されていてその被害者を保護し、加害者を罰する」といった国ですが、今の日本はまるっきり逆ですよね。被害者は落ち度を探されバッシングされるばかりか、酷いときだと冤罪を疑われたりと散々な扱いを受けてなお冷静さや被害の訴え方を問題視されるのですから。

 

思うに、日本全体が性暴力被害者に対して厳しいのは「日本は安全な国なんだから、性暴力の被害に遭ったなんて主張するのは自意識過剰か冤罪に違いない」という思い込みに基づいているのではないでしょうか?もしそうだとしたら、まずはその認識を改めることから始めなければなりません。

 

3、いつまで日本は諸外国に比べて「安全な国」でいられるのか

仮定の話になってしまいますが、もしも私が性暴力の被害者かつ訴えられず泣き寝入りとなってしまったら、一人でそのことを抱え込むのが限界だと感じたなら、日本人ではなくアメリカで知り合った方々に相談しますね。だってコメントの流れを見るに、日本人だったら「理学部なんて男性の割合が多い学部に進んだ時点で自業自得」とか「そんな格好していたら被害にあって当然」とか言ってきそうですし。性犯罪にあって傷ついている上にさらに傷つく(可能性の高い)選択をするべきではないと考えるからです。大体、「被害に対する声の上げ方」に関してもうるさいですよね、結局被害に遭われた方の気持ちはご本人にしかわからないし、性暴力なんて人間の尊厳を著しく傷つける行為に対し冷静であれとか伝え方には気をつけろなんて他人の気持ちを思いやれる想像力が少しでもあったら言えないと思いますが。それとも自分は絶対に被害者にならないという自信でもおありなんでしょうかね。

 

これからの日本を良くするためには、まず性暴力の定義をきちんと認知させること。暗数を無視せず、被害者の声を封殺しようとするよりもまずは耳を傾け判断すること。その上で、被害者の権利を守り、加害者を正当に罰することが必要不可欠であると考えます。

長々と書きましたが、望む望まないに関わらず、約3年後には東京オリンピックです。その時に来日した方がもしも痴漢に代表される性犯罪の被害者となってしまい、声をあげて大きな問題になってしまってから「日本人でひとくくりにするな」など的外れにも主語が大きいと訴えたり「ここは日本だから」とか「嫌なら出て行け」と論外な主張をしても手遅れなんですから。

*1:もちろん、「性行為に対する責任能力のある年齢同士」という前提です。ここでは講習と同じく大学生以上と仮定しております

*2:私が高校生のときはセンター試験の日は痴漢に気をつけるよう言われました。(被害者が試験に遅刻できないから訴え出られないという理由で痴漢が出てくる)